福岡MPオフィスも松股です。
福岡県でも連日猛暑の日々が続いていますが、みなさまくれぐれもご自愛ください。
さて今回は、近年登場した「おまとめ住宅ローン」について解説します。
近年、一部の金融機関では他のローンの残債を住宅ローンに上乗せして借入をする「おまとめ住宅ローン」を取り扱うようになりました。
「おまとめ住宅ローン」とは、今返済中のローン(マイカーローン、フリーローンなど)を新しく取り組む住宅ローンに上乗せしてローンを一本化するという内容の商品です。
「おまとめ住宅ローン」を利用する主な目的としては以下の2つが挙げられます。
・今返済中のマイカーローンやフリーローンなどの返済負担を軽くする
・審査に通りやすくする
「おまとめ住宅ローン」にはメリット・デメリットがそれぞれあるので、ここではその内容を理解していただければと思います。
なお私の知るところでは、現在福岡県内で利用できる「おまとめ住宅ローン」を取り扱っている金融機関は3社だけです。
住宅ローンの金利と比べるとマイカーローンやフリーンローンは高金利だと言えます。
また住宅ローンのように借入年数が長くないので、その分毎月の返済額が高くなってしまいます。
それを住宅ローンと同じ金利・同じ返済年数で借り換えをするので、当然ながらそれらのローンの負担が軽くなるのです。
住宅ローンはじめ全体のローンを一本化かつ負担を軽くするという目的から利用する人も多いと思われます。
住宅ローンの審査項目の中に「返済比率」という項目があります。
返済比率は以下のように計算されます。
(住宅ローンの年間返済額+住宅購入後も返済が続くローンの年間返済額)÷ 年収
ただし住宅ローンの年間返済額については、金融機関(銀行や保証会社)によって計算の仕方が様々です。
実際の適用金利の返済額で計算をする金融機関もあれば、金利を3%や4%と仮定したいわゆる「審査金利」で計算をする金融機関もあります。
審査金利で計算すると住宅ローンの年間返済額が高くなるので、他に返済中のローンがあるとそれの年間返済額や年収によっては、希望する金額の住宅ローンを借りられないということもあるのです。
その対策として「おまとめ住宅ローン」を利用するという手段があります。
事例としてこのようなケースです。
①申込人の年収500万円
→ 審査規定の返済比率は35%まで
②住宅ローンのみの場合の年間返済額
140万円
③マイカーローンの年間返済額40万円(残り5年、残高200万円)
④マイカーローンを住宅ローンにおまとめした場合の年間返済額
150万円
この事例で返済比率がどうなるか、計算を図で表すとこうなります。
住宅ローン+マイカーローンで年間返済額合計が180万円だと、返済比率が36%>35%なので審査の規定に合わず、住宅ローンの借入金額を減額せざるを得ないということになります。
しかしマイカーローン残高を住宅ローン取組額にをおまとめすると、年間返済額が150万円となり返済比率が30%<35%で審査規定に合い、希望金額を借りることが出来るようになるのです。
加えて、住宅ローン+マイカーローンで年間返済額が180万円だったのが「おまとめ住宅ローン」にすることで年間返済額が150万円となり、返済負担も軽くなりました。
しかしこの取り組み方には大きな注意点が2つあります。
この事例のように、残り200万円をあと5年で完済する予定だったマイカーローンを住宅ローンに含めたことから、住宅ローンの返済が長年に渡ればマイカーローン分の返済総額が増えてしまう場合があります。
この事例だとマイカーローン残高200万円を住宅ローンにおまとめしたことによって、住宅ローンの年間返済額が10万円増えました。
これはマイカーローンを「おまとめ住宅ローン」で借り換えた分の返済額だと言えます。
そこで例えばこの住宅ローンが35年返済で、途中で繰り上げ返済を一度もすることなく現行の金利で35年かけて返済したとします。
すると年間返済額10万円×35年で350万円、元々の予定の返済総額200万円より150万円も高くなってしまうのです。
ただし返済途中で何度か繰り上げ返済をすればその差額を抑えることが出来るし、短期で完済すれば当初の予定金額200万円を下回ることも考えられます。
このケースでは、物件購入価格を大きく上回っている住宅ローンを取り組んでいることから、もしも将来物件を売却しようとしても、タイミングによっては売却しづらい状況となる恐れがあります。
その時の住宅ローン残高が売却金額よりも上回っている可能性があるからです。
「おまとめ住宅ローン」は全体のローンを一本化して返済額を抑えることや審査に通りやすくなるというメリットがある一方で、先述の①②のようなデメリットやリスクがあることに注意が必要です。
「おまとめ住宅ローン」を検討する際には、詳細な返済シミュレーションをチェックするなどして慎重に検討することをおすすめします。